2019.01.11

Traumerei Fabrikがやっていきたいこと
– これからのこと。 –



みなさんごきげんよう、Traumerei Fabrikの冷凍イナバPです。

前編中編と、過去と現在の話をしてきたので、最終回はこれからのTraumerei Fabrikについておはなししたいと思います。

コンセプト作品の功罪

ここまで、「私たちはコンセプトにこだわって作っています」という話をしていました。いきなり矛盾してしまって申し訳ないのですが、2017年から2018年にかけて、COURTRITUALという、コンセプトがほとんど存在しないシリーズを2作リリースしています。


COURTRITUAL #01 / COURTRITUAL #02

コンセプトを立てることの意味に関しては、前編でご説明いたしました。けれどふと冷静になって考えると、私たちは同人即売会に来てくださる方々をないがしろにしているのではないかということに思い至ったのです。

同人即売会、特にコミケに関してはよく戦場に例えられます。来場される方にとって一瞬一瞬が勝負の時間であり、それは私たちサークル側もそうです。いかにして、会場で初めて私たちのことを知ってくださった方に、私たちの作品を手にとっていただくか。あるいは視聴していただくか。

もちろん、見て頂いた上で、自分の趣味嗜好には合わないと感じる方もいらっしゃるでしょう。そういった方には、感謝こそすれど、決して不快に思ったりしません。即売会という戦場で、短くない時間を使って私たちの作品を見て、聞いてくださる方がいらっしゃることは本当に嬉しいことです。

はたして、私たちはそういった方たちに対して親切だったか? と自問自答すると、ある意味で不親切だったと反省する次第であります。それは、無愛想に対応したとか、不誠実な応答だったとか、そういうことではなく。短い時間で十全に伝わる努力を怠っていたという意味で。

コンセプトを立ててガチガチに作風を固めることは諸刃の剣なのだと気づきました。私たちのことを知ってくださっていて、あらかじめ作品の特設サイトなどを見て来ていただいたかたには良い体験をお届けできている自信がありますが、一方で、いわゆる「ジャケ買い」をして、WebサイトやTwitterを見ることなく、CDだけを手に取った方には説明不足だったような気がします。

だからといって「じゃあCDだけで完結する作品にしよう」というのは、私たちにとっては敗北である気もするのです。そこで、着地点として「ライトな作品」を作ってみようという結論を出したのです。明快なテーマで、CDだけでも楽しめて、WebサイトやTwitterを見て下さった方にはもっと楽しんでいただける……。そんな作品があってもいいなという気持ちで、まずは2作頒布いたしました。

COURTRITUALシリーズは、東方Projectという作品の持つ宗教性やアニミズムにフィーチャーして、「宮中祭祀」をモチーフにグラフィックを制作する……。というタテマエのもと、曲もデザインも、その時やりたいようにやろう、というシリーズです。このシリーズは、「こういうの思いついたんだけど今回のコンセプトには全然合わない!」というフラストレーションを発散する役割も担っています。

「間口をゆるやかにとってTraumerei Fabrikというサークルを知っていただく」という目的上、お求めやすい頒価に設定し、実際に東方神居祭やコミケにて頒布いたしました。その結果、とりあえずCOURTRITUALだけ聞いてみますと言ってくださる方や、COURTRITUALを聴いてTraumerei Fabrikを好きになりましたというありがたいお言葉も頂戴して、ひとまずは成功したかなという安堵の気持ちでおります。

コンセプトがあることと、キャッチーさの両立

また、C95で頒布した『幻想メトロ』も、モチベーションの一つに「コミケ映え/会場でもわかりやすいキャッチーさ」がありました。この作品はコンセプトのある作品群にカテゴライズされるものではありますが、努めてわかりやすく、ポップに仕上げた作品です。

この作品に関しては、単純に「わかりやすかったから良かった」だけの結果ではないと思いますが、想定以上に好意的に受け止めていただき、ありがたいことに会場頒布分を完売することができました。(お求めいただけなかったみなさま、申し訳ありませんでした)

1月14日を目処に公式通販での頒布を開始いたしますので、もう少しだけお待ちいただければ幸いです。

これから、私たちが挑戦したいこと。

これら三作品を通して、Traumerei Fabrikとしてこれからやっていきたいことが少しずつ解像されてきたように感じています。

まず、コンセプトの深度は「浅いものと深いものの二軸でやっていく」ことです。うまく回ったという手応えがあるので、今度はこの指針からぶれないように、どちらの軸に重きを置いた作品なのかを意識したディレクションを心がけようと思っています。

そして、もっともっとたくさんの人に聴いていただくためのアプローチをより多様化して一つ一つのクオリティを上げていく必要性も強く感じました。『幻想メトロ』のプロモーションを通して、デザイナーの立場として「いくら曲が良くても聴いてもらえないと始まらない」という危機感を覚えたのです。そのために、純粋にクリエイティブの質を上げることも必要だし、これまでやってこなかった、動画制作や演出的なWebの実装といった領域まで、まさに指先まで神経を尖らせていかねばならぬと心を新たにしています。

その先にある一つの目標として、クリエイティブユニットとして他サークル様の作品づくりのお手伝いがしたい、という思いがあります。

東方アレンジ作品に対する楽曲提供やデザインのご依頼はもとより、東方アレンジ作品以外でも、例えばゲームや動画用のBGM、書籍に深みをもたせるためのダウンロード形式の楽曲、二次創作作品のコンセプトからの参画など、私たちにできることをご依頼していただけるようになっていければ、と思っています。


さて、というわけで少し先の未来への抱負を述べました。これから、今まで以上に、Traumerei Fabrikというユニットとしてよりさまざまなことに挑戦していこうと思っています。もしかしたらその過程で、これまでの私たちと全然違うじゃんとご期待を裏切ってしまうことになるかもしれません。そうならないよう精一杯の努力をしていきますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。これからも、Traumerei Fabrikをどうぞよろしくお願いいたします。