TRFB1015

INFORMATION

TRFB1015 “COURTRITUAL Annual Report #01”
Released on 2023.10.15
第19回 東方紅楼夢










●マキシCD / ブックレット4P




STORY

――ケの日をちょっとだけ楽しむために、ハレの日の思い出をそっとしまって。

COURTRITUALシリーズの総集編第一弾です。
手焼きでの少部数頒布だったCOURTRITUAL #1~4をまとめました。

16曲入りの聴き応えのあるアルバムです。

過去作を入手できなかった方も、改めてコレクションしておきたい方も、ぜひお手にとっていただけると幸いです。



TRACKS

  1. デザイアドライブ
  2. U.N.オーエンは彼女なのか?
  3. ネクロファンタジア
  4. 懐かしき東方の血(incl. エクステンドアッシュ)
  5. ネイティブフェイス
  6. 砕月
  7. 永遠の春夢(incl. 見た事も無い悪夢の世界)
  8. 広有射怪鳥事 ~ Till When?
  9. Eternal Dream~幽玄の槭樹
  10. エクステンドアッシュ~蓬莱人
  11. リーインカーネイション(incl. Complete Darkness)
  12. 死霊の夜桜
  13. 星条旗のピエロ
  14. 竹取飛翔~Lunatic Princess
  15. アルティメットトゥルース
  16. 亡き王女の為のセプテット

STAFF

Arrangement,
Mixing, Mastering,
Story
秋晴
Design,
Development,
Screenplay
冷凍イナバP
Illustration
全立
M1-5,7-16 Original
ZUN(上海アリス幻樂団
M6 Original
あきやまうに

LINERNOTES

こんにちは、秋晴です。 
はじめましての方もいらっしゃると思うので簡単に今作の説明を。
今作は「COURTRITUAL」というシリーズ作品の総集編となっております。

このシリーズは、ただその時アレンジしたい曲をやりたいようにアレンジしたミニアルバムというコンセプトもへったくれもない作品たちなんですが、だいたいその時その瞬間の僕の「好き」がふんだんに反映された作品集なので、1曲1曲がかなり濃い、それぞれが僕の代表曲と言っても過言ではない作品たちになってるかと思います。

ただ、発足から6年経ってるシリーズなので、過去作はほぼ絶版、ミックスやアレンジの思考も当時より変わりつつありました。
また、僕たちも一度休止期間を挟んだこともあり、復帰後に初めて僕たちの存在を認知したという方も増えつつありました。
ですので、そういった変化感もアップデートしつつ、ここらで一度名刺代わりになるような作品を作っとこうという運びになり、今作に至ります。

結果16曲入り、総収録時間1時間超のかなり胸焼けするアルバムとなりましたが、この作品が皆さんのケの日を楽しむ一助となれば嬉しいです。

冷凍イナバPです。
COURTRITUALも総集編が出るくらい溜まったので、総集編です。思い返せば2017年、突然札幌に行き#1を頒布して、そこから随分時間が経ちました。

コンセプトのある作品を「ハレの日」だとすると、その時やりたいことをやる「ケの日」にあたるのがこのシリーズです。#1〜4を四半期報と捉えると、まとめは年次報告になるのかなということで「Annual Report #1」です。

いつもは頒布時期の年中行事に合わせたグラフィックのジャケットなのですが、今回は総集編ということで全立さんにお願いしました。旅行はハレの日に含まれそうな気もするんですが、日常のちょっとした小旅行くらいの雰囲気ですね。年報出したらやっぱ気晴らしに旅行くらい行きたいし。お洋服とってもかわいく仕立てていただきました。出かける二人の浮かれてる感じとか、準備してるときのワクワクとか、たくさん詰め込んでもらえて感謝です。

さてさて。この6年で聞く音楽が変わったかと言われるとそうでもないんですが、配信サービスのおかげでジャンルの幅は増えたかもしれません。と言いつつ、最近は一周回って下北っぽい曲をよく聞いています。去年放送してたぼっち・ざ・ろっくの影響だと思われます。雑に下北っぽいとか言うと怒られるかもしれない。いろいろ聞いてます。

それでは、また次の一年も張り切って行きます!

TRFB1014

INFORMATION

TRFB1014 “cle+ec+1ve”
Released on 2022.10.23
第九回博麗神社秋季例大祭


















●本作は音楽CDではありません。楽曲データをダウンロードする形式の作品です。




thank you!

STORY

紅霧異変以降──、フランは495年の“引きこもり”を卒業し、時折紅魔館を散策するようになった。

そのおかげで以前よりも「フランドール・スカーレットという存在への畏怖」は薄れていた。館の外にも漏れ聞こえるほどには、フランの狂気は過小評価されてゆく。

妹様が出歩くようになったことは、それ自体は好ましいことである一方、“勘違いしたお客様”が増える原因にもなっていて……。とくにここ最近は、館の門番が愚痴る程度に望まざる客人の来訪が増えている。

周りのことに無関心なパチュリーではあるが、自分が集中しているときに外が騒々しいのは思いの外ストレスだった。

そんなある日、紅魔館の庭園で激しい爆発が起こる。それはまるで、「すべてを破壊する程度」の衝動が抑えられていないかのようで────



TRACKS

  1. ignition
  2. benefaction
  3. distortion
  4. whatever
  5. detective
  6. perspective
  7. the game is afoot!

STAFF

Arrangement,
Mixing, Mastering,
Story
秋晴
Design,
Development,
Screenplay
冷凍イナバP
Illustration
m
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

「探偵モノやりたい!パチュリーで安楽椅子探偵モノとかどう?」いつも通り僕の急な一言で3年ぶりの新譜制作はスタートしました。
毎回こんな発言に振り回されながらもしっかり作品としてまとめ上げる相方に敬意を表します。 

さて、楽曲面のお話です。楽曲面では意図的に明るくキャッチーな路線と、なるべくコンパクトにすることを意識しました。

3年前、休止前に発表した「ティルナノーグと永遠の歌」は、自分たちが向かいたい方向性と受け手側が自分たちに期待している方向性がある程度合致していると判断し、キャッチーさよりも音楽に意味を持たせる方向性に振って制作していました。
復帰後初となる今回はそういった受け手側の自分たちに持つイメージがいい意味でリセットされたと思っているので、一旦音楽的に聴きやすい、ストーリーとか知らなくても楽しめる楽曲を目指して制作したつもりです。

そしてご存知の通り音楽の楽しみ方も変わってきていて、実際僕も同人以外でCDを買うことはほぼ無く、サブスクなどで気になる曲を大量に消費することが殆どになっています。

さらには気になる曲の気になるところだけ聴いて次の曲に移る、なんてこともしばしばだったり。一応作り手としてその姿勢はどうなん?というのはご指摘はコメントはあろうかと思いますが、世間的にはそんな流れになってきているのかなと実感はあります。

とはいえ、しっかり最初から最後まで聴いてほしい〜!なんか4分くらい超えとかないと手抜きみたいじゃない?という勝手な作り手側の気持ちはもちろんありつつ、復帰後初作品という前評判もない気楽な状態での作品だったので今回は試験的に要点をキュッと絞ったコンパクトな楽曲を意識してみた次第です。

だらだら書きましたが、要するに肩肘張らず手軽に聴けるキャッチーなアルバムを目指しました!ということでして。もちろんそれぞれの楽曲にもしっかり設定やら仕込みやらは入れたりしてるので、考察好きな方は色々聴いて楽しんで貰えたら嬉しいです。

長くなりましたが、兎にも角にもまたこうしてイベントで作品を出せるようになって今は久々にワクワク気分です。久々にTraumerei Fabrikの名前が見れて嬉しいという声も頂いたりして嬉しかったです。

ではでは、3年ぶりの新譜、お楽しみ下さい。

推理小説、好きなんですよね。といってもそんなに詳しくないんですけれど。

パチュリーの安楽椅子探偵と聞いた時に「お、いいじゃん」と思ったのも束の間、推理小説の組み立ての難しさに直面してわりと苦しみました。とくに秋晴とぼくが意識したのは誰も悪者にしないこと。ストーリーを考案する段階ではすでに、曲は明るく行きたいよね、という方針はそこそこ見えていたので、誰かを犯人に仕立てるのもな……、そもそも紅魔館の連中にシリアスなドラマが演じられるのかな……、ということでたどり着いたのが、叙述トリックでした。ええ、叙述トリックです(盛大なネタバレ)。

原作ではフランがアガサ・クリスティの著書『そして誰もいなくなった』に言及していることにあやかって、本作は『アクロイド殺し』をほんの少しだけリスペクトしています。また7曲目のタイトルは秋晴くんの提案でホームズからの引用にしてみたり……と、ネタバレはこのくらいにしておきますが、最後のスパイス程度に色々なことを隠してみました。そういった点でもお楽しみいただける作品になったのかなと思います。

さて。「3年ぶりの新作」の制作にあたって、ぼくらは大いに悩みました。前作がそれなりに手応えがあったのもあり、今回も意味ありげなものじゃないと復活にふさわしくないのでは、なんていっぱしのクリエイターを気取ったりして。でも悩んでいるうちに、景気よく、聞いていて楽しい、考えてみて楽しい、そういう作品のほうがいいんじゃないかと思いはじめて、本作はできあがりました。頭からっぽにして聞いてみてください。気持ちいいと思います。たぶん。ランダム再生もいいぞ。

ご視聴中にはぜひ、「どんな場面なんだろう?」と妄想してみてください。キャラクターたちがみなさんの頭の中でセリフを言い始めたらぼくたちの思惑通りです。

イラストはmさんにお願いしました。今作、デザイントーンがわりと女性的な方向に振り切っているなかで、いい意味でエレガンスになりすぎないというか、ポップで楽しい雰囲気も感じられる、だけどトーンから大きく外れはしない、という絶妙な塩梅のものに仕上げていただきました。mさんのイラストがなければこのニュアンスは伝えられなかっただろうなと思います。感謝です。ちびキャラたちも紅魔館の中でドタバタと個性を発揮してる感じがありありと出ていて最高ですよね……。

てな具合で、みなさん、お久しぶりです。これからもTraumerei Fabrikをどうぞよろしくお願いいたします!

TRFB1013

INFORMATION

TRFB1013 “COURTRITUAL #04”
Released on 2019.10.13
東方紅楼夢15



STORY

ケの日をちょっとだけ楽しむために、ハレの日の思い出をそっとしまって。

COUATRITUAL #04 ハロウィン

TRACKS

  1. 永遠の春夢
  2. ネイティブフェイス
  3. 広有射怪鳥事 ~ Till When?
  4. アルティメットトゥルース

STAFF

Arrangement,
Mixing,
Mastering
秋晴
Design
冷凍イナバP
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

音楽担当の秋晴です。例によって修羅場の中執筆しています。

特に意識したわけじゃないんですが、今回はジャズ色が強めのロックアレンジになってるかなと思います。#3以前と比べるとちょっとずつ音楽性も変わってきてるんですねぇ〜。

内容に触れていくと、ジャンルだけでなく展開も結構ひねくれた曲が多くて、かなり異質なアルバムになったかと思います。シリーズ4作目ともなればテコ入れが必要ってことですかね。

ちなみに今作が2019年の活動納めになるかなと思うんですが、今年は同人関係の作業が年初から今まで結構途切れなく続いていて、しばらく自分の曲ばっかり聴いてたような気がします。

そんな中で頭を一回リセットしよう!って時は最近BUMPの昔のアルバムを引っ張ってきて聴いてます。なんていうかやっぱりいいんですよね、BUMP。彼らはいつだって僕の青春そのものです。

今後はとりあえず制作が落ち着くのでいよいよ鬼形獣やりたいなと思います。なんか6面がいろんな意味でヤバいとか。気になる。早くやりたい。あとはファミコン探偵倶楽部がリメイクされるとのことで、推理ゲームとか推理小説とか久々にやってみたいなって感じです。最近のでおススメあったら教えて下さい。

それではまたお会いできる日まで。

冷凍イナバPです。シリーズ4作目です。イベント、毎年開催時期が同じなせいで宮中祭祀はもうネタが尽きています。ということでハロウィンです。Trick or Treat!

デザインは……。前回文字に逃げたので、今回はできるだけ文字要素を排除しようかなと思い、アール・デコな感じにしてみました。ハロウィンパーティのインビテーションぽく見えてるといいな。

毎回恒例の作業用BGMですが、今回はひたすら耳マッサージのASMR聞いてました、チョットヤバいね。そんな中で聞いていたアーティストというと、yonige、the peggies、赤い公園、などなど。ガールズバンドブームなのかもです。

あと最近ぼくのライナーノーツの文章を秋晴にパクられてる気がする。

それでは、今回はこのあたりで。しっかり聞いてくれなきゃいたずらするぞ! 冷凍イナバPです。

TRFB1011

INFORMATION

TRFB1011 “ティルナノーグと永遠の歌”
Released on 2019.08.12
Comic Market 96 特設サイト↗



STORY

東風谷早苗という少女は、予想通りというか、予想に反してというか、いたって普通の少女だった。

田舎の女の子として、普通に育ったし、普通に暮らしていたし、常識的で現代的な生活を享受していた。自分自身が風祝という立場を継ぐと決まっていたし、そのために必要な知識や作法、立ち居振る舞いだって教えられたが、それはそれとして割り切れていたし、周囲もそれはそれとして、普通の付き合いをしてくれた。だからこそ、東風谷早苗はいたって普通の少女だった。

だけど、そんな普通も長くは続かないようだった。人々が科学の文明の力を得てから、ずいぶんと時が流れた。その流れの中で、非科学的な事象は「迷信」として世の中から徐々に排斥されていった。誰かが存在を信じることによって生きている妖怪たちにとって、現代というのは住みづらい場所へと変わっていった。風祝の子が仕える守矢神社もまた、例外ではなく。

――幻想郷へ移り住むという決断は、普通の少女には持て余す大きさだったけれど。風祝としてはそれが自然な選択だった。

そうして東風谷早苗は幻想郷の住人となり、ほうぼうでいろいろな珍事を巻き起こしたのはご存知のとおり。こちらの世界では、「一風変わった少女」としてその存在を受け入れられている。そうしていくつかの四季が過ぎ、現代のことも良き思い出として許容できるようになってきた頃、その言葉は唐突に投げかけられた。

「里帰りできると言ったら、する?」

そう言った本人――八雲紫の表情は、逆光に遮られて、ついぞ拝むことはできなかった。

TRACKS

  1. 風祝の少女
  2. 流るる星と波の音
  3. 燃える朝日と鳥の声
  4. 揺れる架線と映す水
  5. 朽ちた校舎と軋むドア
  6. すさむ社と留守の神
  7. 鳴かぬ世界と秘めた誓い
  8. ティルナノーグと永遠の歌

STAFF

Composing(M1), Arrangement(M2-8)
秋晴
Design,
Development,
Storytelling
冷凍イナバP
Illustration
かずま
Mixing,
Mastering
憂鬱
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

「ティルナノーグと永遠の歌」をお手にとっていただきありがとうございます。音楽を担当いたしました秋晴と申します。

「ティルナノーグと刻の歌」という過去作をベースに1から作り直した作品が今作「ティルナノーグと永遠の歌」となっております。音楽的には前作を知っていればニヤリとするところもあるかとは思いますが、基本的に全て新曲です。「ティルナノーグと刻の歌」にはいろんな感情があり、一言では言い表せないんですが、一番強い感情は後悔の念が強い作品でして。我々の力不足な部分が大きく、「ポテンシャルはあるコンセプトなんだけどなぁ」と心にしこりを残したまま4年が経つこととなりました。その間僕たちも色々と成長した部分があり、「今の僕たちがティルナノーグをやったらどうなるだろう?」と考えるのは自然な流れでした。ゼロベースからの楽曲制作でしたが、なんとか頭の中のストーリーを無事に楽曲に落とし込めたのではないかなと思います。

今作のイメージの1つとして「海」というものがあります。幻想郷には「海」がありません。そして舞台となった早苗さんの故郷も「海」がない土地です。そんな彼女の世界に今まで無かった「海」が現れた。ここで単純に水着ではしゃぐ早苗さんの作品にならない所が我々の癖でして。しばしば「海」はいろんな意味を持ちます。「夏」「陽気」といった明るいものから「静か」「寂しい」といった暗いもの、更には「生命の根源」「人間には御せない自然の力」といった壮大なものまで。今作に登場する「海」にも意味を持たせています。そのあたりの話はまたいつかお話できたらと想います。

語りたいことは山程あるのですが、コンセプトの内容についてはこれくらいにして。今作を手にした方が、より東方projectを好きになっていただけたら、1ファンとしてこれほど嬉しいことはありません。と、言いながら、今作の音楽に関して言えば意図的に原曲の要素をあまり残さないようにしています。「こんなの東方の2次創作じゃねぇ!」という考えを抱く方もいらっしゃると想定はしていますが、ぜひ温かい心で僕たちの同人音楽、そして2次創作への挑戦を感じていただけたらなと思います。

音については「幻想メトロ」から引き続きミックス/マスタリングを憂鬱さんにお願いさせていただきました。制作が後ろ倒しになり締め切りをがっつり過ぎての素材提供となり、とてもとても迷惑をおかけしました。おかげで作品が完成することができ感謝しきれません。この場を借りて謝罪とお礼を申し上げます。

前述したとおり、今作は4年前の自分たちの作品への贖罪と、そして同人音楽というジャンルへの挑戦でもあります。東方projectのファン、同人音楽というジャンルが好きな方、そして4年前の自分たちへ、この作品が届くことを願って。

これがリメイクなのか続編なのか自分たちの中でも曖昧なのですが、『ティルナノーグと刻(とき)の歌』に続くシリーズが本作、『ティルナノーグと永遠(とわ)の歌』です。

曖昧といったのは、刻の歌も永遠の歌も全く同じストーリーの上に成り立っているからです。幻想郷は楽園で、そして早苗のいなくなった現代は荒廃する、この物語はどちらも共通です。

刻の歌の時点で考えていた結末は、崩壊した現代を見た早苗が失意に暮れるというあまりにも暗すぎるものでした。それ故に、刻の歌はただの帰郷の部分しか語らないという見せ方をしています。そのときのメモに「ただし、これだけだと伝わらないのでいつか解説本みたいなのを出したい」とあります。本作は解説本ではないですが、物語の骨の部分はわかりやすくなったのではないでしょうか。

刻の歌から踏み込んだ部分として、早苗が実際に荒廃した現代を歩き、何を感じ、何を考えたかを、書き下ろしの文章で表現しました。コンセプト以外のストーリーを書いたのなにげに初めてでした。どうでしたかね……?

とはいえ、この作品は起承転結でいう承までしか語っていません。これは意図的なもので、この先はみなさんの中の早苗さんに委ねたいからです。制作中、ぼくも秋晴も意識してこの先を考えないようにしていたので、ぼくたちでさえどうなるかわかってません。ティルナノーグの三次創作が見たい……!

かずまさんには今回もお世話になりました。早苗さんの表情なんかはめちゃくちゃ細かくダイレクションをしてしまったのですが、曖昧なニュアンスを汲み取って、時にはかずまさんからも提案をしていただき、さすがの一言に尽きます。イラストの力によってぼくたちのなかでの世界の確度を高められたと感じる瞬間ってすごく好きです。

憂鬱くんもありがとうございました。ぼくは音のことはあんまりよくわかってないので秋晴とのやり取りを横から見てるだけだったんですが、やりとりごとに確実に良い音楽になっていっててすごいなあと思いました。はい。

それから最後に4年前の自分へ。サブカルチャーの体現なんておこがましいことは二度と言わないように。でも刻の歌で考えてたことは無駄じゃなかったと思います。

それでは、またお会いできる日まで。

TRFB1010

INFORMATION

TRFB1010 “COURTRITUAL #03”
Released on 2019.02.11
極・東方神居祭14



STORY

ケの日をちょっとだけ楽しむために、ハレの日の思い出をそっとしまって。

COUATRITUAL #03 祈年祭

TRACKS

  1. U.N.オーエンは彼女なのか?
  2. ネクロファンタジア
  3. 死霊の夜桜
  4. 亡き王女の為のセプテット

STAFF

Arrangement,
Mixing,
Mastering
秋晴
Design
冷凍イナバP
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

COURTRITUAL #3をお手にとって頂きありがとうございます。アレンジ担当の秋晴でございます。冬コミで『幻想メトロ』を頒布してから約1ヶ月、超スピード(当サークル比)での新作頒布となりました。

『幻想メトロ』では明るいロック、ポップス寄りな編曲が多かったのですが、今回はいつも通りのロックアレンジを皆様にお届けできたかなと思います。

曲目を見ていただくとわかる通り今回は強い原曲を中心に選んでおります。「強い」というのは人気面であったり、流れる場面であったり色々な意味を込めてこの表現をさせていただきました。

実を言うと2019年は僕が東方アレンジ、ひいては音楽を始めて10年が経つ年でもあるんですね。そんな年だからこそ、今の自分の力量でこの強い原曲達をどこまで料理できるのだろう、自分の10年間を代表するアレンジを作ってみたい。そんな思いが今回のテーマとなっています。結果は如何だったでしょうか? 判断は聴き手の皆様に委ねるとして……

そんなわけで記念すべき音楽歴10年目の年の初頭にすっかり燃え尽きてしまった感はありますが、今までの総決算とこれからの目指すところが見えたアルバムになったかと思いますし、そんなアルバムを活動の原点である北海道は札幌市で最初に頒布できることを嬉しく思います。

COURTRITUAL #3、最後までどうぞお楽しみ下さい。

冷凍イナバPです。

COURTRITUAL 第三弾は「祈年祭」がテーマです。祈年祭・新嘗祭は宮中祭祀のなかでも重要なものなのですが、どれもこれも五穀豊穣、稲作に関連していて、第一弾の「神嘗祭」でやったお米モチーフがぼくの首を締めてきます(笑) 手数、増やしたいですね。

ということでもう万策が尽きまして、「pray」という文字をグラフィックに落とし込む、という逃げの一手を打ちました。目がめちゃくちゃチカチカする。作っている最中もパソコンの画面を見続けることができなくて、しょっちゅう休憩をとっていました。どうせならブックレットも目をチカチカさせてやろうと思って蛍光バチバチです。「祈年祭がテーマ」とはなんだったのか。

さてさて。

今回の制作期間中は、The 1975やFrancis and the Lightsを聞きつつ、邦楽ザッピングをはさみつつ、という感じでした。そうそう、久しぶりにスペサンを聞いたのですが、エモいな〜。こういうバンドやりたいよねっていう話を秋晴くんとしてました。

それでは、リリース5日前(例によって若干修羅場)の自宅から、2019年のみなさまの心の五穀豊穣を祈って。

TRFB1009

INFORMATION

TRFB1009 “幻想メトロ”
Released on 2018.12.30
Comic Market 95 特設サイト↗



STORY

博麗神社の近所に湧いた間欠泉にまつわる騒動が一段落してからはや10年。当時を振り返って思い出話に花を咲かせようじゃないかと、早苗、神奈子(と、オマケで諏訪子)が持ってきたのは一束の資料。それは地下の鉄道計画だった。これがどうしてなかなかよくできている。

10年前の絵空事を本気にしてみるのも悪くない。どうせ、地底の土地は有り余っているのだし。
「迷惑がかからないなら、勝手にすれば?」と、霊夢は興味がないみたいだけれど……

そんなこんなでできてしまった地下鉄には、今日もいろいろな存在が乗り込む。多くは自分の足で遠出をするのが難しい、里の人間たち。遠くに行く演出としてわざわざ乗ってくる妖怪や幽霊、鬼や神なんかもときどき。霊夢もちゃっかり、券売機の隣におみくじを置いている。

今日は誰がどこへ向かうのだろう。メトロは走る。幻想郷の有象無象とワクワクを乗せて――

東方projectの物語では起こり得なかったけれど、たまにはこんな妄想も悪くない。東方地霊殿から10年目を記念して、Traumerei Fabrikが送るフィクションのおはなしです。

TRACKS

  1. 幻想メトロ、全線開通
  2. 旅のしおりを忘れずに
  3. いつもの待ち合わせ場所
  4. 雑踏の中へ
  5. 本日快晴地底日和
  6. 地底の車窓から
  7. ダイアグラムラプソディ
  8. 最終便
  9. 幻想メトロ

STAFF

Arrangement
秋晴
Design,
Development,
Storytelling
冷凍イナバP
Illustration
たま。ひよこ缶
Mixing,
Mastering
憂鬱
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

Traumerei Fabrik 9作目『幻想メトロ』、まずはお手に取っていただきありがとうございます。

今作のアレンジのコンセプトは「明るくて、ポップで、キャッチーなアルバム」でした。作品のコンセプトや構想などは例によって6年くらい前から出ていた今作ですが、いざ作ってみるとまぁ難しくて。

というのも僕が田舎者なために地下鉄に乗る機会が全然なかったというのが大きいのです。そこで今作の制作に入る段階でまず札幌に行き、地下鉄に乗って色んな場所に行きました。無心で一時間くらい適当に乗って移動してたんですが、地下鉄って暗いし景色も特になければBGMみたいなものもなくて。だからこそ降りて地上に出てみると「別世界に来た!」という印象が強烈に残って、僕が今回目指す地下鉄のイメージってこれかなーと。そこからはとにかく色んな音楽に触れて、作ってみての繰り返し。一曲終わったら別世界が広がってる! そんなアルバムを目指して制作してました。

そういった事情もあり、今作は今までのアルバムの中でも随一のアレンジの幅広さを持つ作品になったのではないかと思います。とはいいつつも好みは変わってないので、ベースはうねうね動き、ドラムソロもあればジャズ的なアプローチもふんだんに入っていますがまぁまぁまぁ。

あと今作において外せない話題としては、ミックス/マスタリングを憂鬱氏に依頼したことです。「うっすら強め」「ちょっと強め」「ほんのり強め」「気持ち強め」という僕のあまりにも抽象的な注文に対してバチッと正解を提示していただき、逆に憂鬱さんからも「こうしたらどうか」「ここはどうしたらよいか」とお互いの意識を擦り寄せながらの作業でした。僕自身こういったミックス以降の作業を他人にやってもらうことがなかったので多くのご迷惑をおかけしながらの制作となりましたが、最後には一発目のラフミックスの段階でバッチリ僕好みの音にメイクされていて、心の中を見られているのではないかと思うほどでした。間違いなく今作は憂鬱さんの力なしには完成し得なかったと言っても過言ではありません。この場を借りて御礼申し上げます。

そんなわけで今作は今までのTraumerei Fabrikのアレンジアルバムとはアレンジもサウンドもちょっと違う、でもどこか「らしさ」もある、不思議で楽しいアルバムになったのではないかと思います。

これまでTraumerei Fabrikを知ってくださっていた方も、これから知るという方も。

旅のお供に『幻想メトロ』、どうぞお楽しみください。

ようやく……メトロの名を冠したアルバムを出せました……長かった……。

というのも、最初に「メトロ」というコンセプトが挙がったのが2012年の11月。6年余りの時間を経てようやくみなさんにお届けすることができました。とはいえ実際に手を動かしていたのは2018年の夏コミ付近からなのですが。

2012年のメモを見ると、無邪気にも「サインデザインやりたい! 路線図作りたい! ノベルティ化したい!」と書かれています。そこから妄想はどんどん広がり、CIをやろうとか、制定書体を作ろうとか、実際にダイヤグラムを引いてみようとか、各駅ごとの駅メロを作るんだとか、それはもう大風呂敷を広げに広げて、広げっぱなしで気づけばずいぶん時間が経ってしまって。

そうして火照った頭は活動休止期間や別のアルバムの制作を経験して徐々に冷やされて、最終的なガワとしては開業にフィーチャーしたクリエイティブに落ち着きました。いい落とし所だという納得半分、本当にこれでいいのかという疑問半分。

ともあれ、地霊殿から10年の節目ということもあり、ここらでいったんケリをつけて、やり残したこと、もっとやれたと思うことは次回作以降に昇華すると割り切って、この数ヶ月舵をとってきました。

幻想メトロの開業にフォーカスしてからもなかなかに難産で、どういう形でデザインに落とし込むのかに数週間悩んだり、コピーを決めるのに数ヶ月かかったり、 本当にうろうろさまよいながらなんとか形にして、いまもさまよいながらこの文章を書いています。その過程で、イラストをお願いしたたま。さんにはとても助けてもらいました。毎回、イラストをお願いするというよりもはやメンバーの一員のように一緒に作り上げていく感覚のほうが強いのですが、メトロは特に、イラストでぼくたちの世界を補強してもらったなと思います。ありがとうございます。

身内を褒め合うのもなんだかなあと思っていつもは曲の話はしないんですが、今回はひとことだけ。通しで聞いたとき、楽しくて、わくわくして、だけどたまに物寂しさもあって、地下鉄の、公共交通の持ついろんな表情が感じられて。いいアルバムじゃないですか?

キャッチーでポップなアルバムのライナーノーツなのになんだかズシッとした重量感のある文章になってしまいました。視聴前にこれを読んでしまったかたは、なにとぞいったん忘れてお聞きいただければ……。

それでは、またお会いできる日まで。

TRFB1008

INFORMATION

TRFB1008 “COURTRITUAL #02”
Released on 2018.08.10
Comic Market 94



STORY

ケの日をちょっとだけ楽しむために、ハレの日の思い出をそっとしまって。

COUATRITUAL #02 お盆(灯篭流し)

TRACKS

  1. リーインカーネイション (incl. Complete Darkness)
  2. 懐かしき東方の血 (incl. エクステンドアッシュ)
  3. Eternal Dream〜幽玄の槭樹
  4. 星条旗のピエロ

STAFF

Arrangement,
Mixing,
Mastering
秋晴
Design
冷凍イナバP
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

お世話になっております、秋晴です。 courtritual シリーズ第2作目となりました。

今作は自分の中でこういう曲展開たまんない!っていう好みをいっぱいいっぱい詰め込みました。いわゆる「エモい」ってやつですね。 例えばわかりやすいところでいくとラスサビで半音キーが上がったり、今までと違うコード進行になったりとかです。

個人的に東方アレンジにRomantic Tp(通称ZUNペット)っぽい音色を使ってみる、というアイデアをいつかやろういつかやろうとして温めていたものだったので、こうして作品として出せて良かったです。

そんな個人的な趣味全開なアレンジ達となりましたが、僕のエモポイントのどれか1つでもお聴き頂いた皆様に刺さって、「わかる、これは熱い。」と思っていただけたならこれほど嬉しいことはありません。

courtritual #2、どうぞお楽しみ下さい。

冷凍イナバPです。

COURTRITUAL第二弾は「お盆」をテーマにグラフィックを制作しました。ほぼ原型なくなってますけど、一応スタートは灯篭流しがモチーフでした。最初は光ってたんだけどな……。いつの間にかのっぺりしちゃいました。

ていうか、第一弾のときに「宮中祭祀が一貫したテーマです〜」みたいな話をしていたのに、第二弾で早くも宮中祭祀関係なくなってしまった。計画性のなさ……(笑) まあ、先祖祭祀だし、ギリギリセーフということで。

#1でうまくいかなかったので盤面の印刷方法を変えてみました。印刷というかTATインキでスタンプしてます。CDになにか不具合があったらご連絡ください。

さてさて。

今回の制作中はわりかしジャミロクワイをヘビロテしてた気がします。あとはヒプマイと夏休み子ども科学電話相談……。ジャミロクワイ、作業に集中できる。

それでは、今回はこのあたりで。リリース2日前の自宅(修羅場)から、みなさまに届くよう祈りをこめて。

TRFB1007

INFORMATION

TRFB1007 “COURTRITUAL #01”
Released on 2017.10.29
極・東方神居祭10



STORY

ケの日をちょっとだけ楽しむために、ハレの日の思い出をそっとしまって。

COUATRITUAL #01 神嘗祭

TRACKS

  1. デザイアドライブ
  2. エクステンドアッシュ〜蓬莱人
  3. 砕月
  4. 竹取飛翔〜Lunatic Princess

STAFF

Arrangement,
Mixing,
Mastering
秋晴
Design
冷凍イナバP
Original
ZUN(上海アリス幻樂団),
あきやまうに

LINERNOTES

今作は私たちにとって初めてのシリーズもの「COURTRITUAL」の第1号となります。

Traumerei Fabrikはこれまでコンセプトアルバムをメインに企画し頒布してきましたが、C92で東方星蓮船コンセプトアレンジアルバム「Othello」を頒布した後、コンセプトアルバムとは別に、コンセプトに縛られず、今自分達がやりたいことを縛りなどを気にせず好きに作るアルバムもあっていいんじゃないかという話が冷凍イナバとの間で上がりました。

そこで、僕たちは今こんなアレンジをメインに作っているんですよ、こんな方向性も出来るんですよという自己紹介も兼ねたミニアルバムを作ろうということになり、今作が生まれることとなりました。

初めての人も、そうでない人も、Traumerei Fabrikのシリーズ「COURTRITUAL」お楽しみいただけると嬉しい限りです。

COURTRITUALという新シリーズ、記念すべき第一弾です。今回ははじめましてなので、さくっと説明をば。

これまでTraumerei Fabrikではコンセプトをしっかりと固めてアルバムを作ってきましたが、その中で「今回のコンセプトには合わないけどこういうのもやってみたいな」という思いが段々と募っておりました。じゃあいっそそのとき作りたいものを作るだけのシリーズでも展開しようか、ということで始まったのがCOURTRITUALです。ゆるゆるとやってまいります。

読み方はコートリチュアルで、「宮中祭祀」を直訳しただけの造語です。ぼくにとって東方projectってやっぱり宗教なので。定期性があって季節感もあって、なかなかにハマったネーミングな気がしています。

そんな感じで作った第一弾は神嘗祭モチーフです。封筒と相まってお米感がつよい。

今回は思いついてからリリースまでがとっても短かったのでやや漫然と手を動かした感が否めないのですが、デザインも「そのときやりたいグラフィック」をバチバチとやっていきたいなと思っております。

TRFB1006

INFORMATION

TRFB1006 “Othello”
Released on 2017.08.11
Comic Market 92 特設サイト↗



STORY

世の中には、正義と悪が確かに存在している。
正義と悪はしばしば物語になるし、事実にもなる。
ここ幻想郷にもいろいろな話が伝えられてきた。

だけど、正義と悪って誰が決めるんだろう。
――変なノートで悪人を殺すのは?
――権力者から盗みをはたらいて貧しい人に施す泥棒は?
――妖怪のために尽力した人間は?

正義と悪というのは、物事を見る立場や時代によって
ひっくり返るものなのだと思う。
それは、まるでオセロの駒みたいに。

かつて人間たちにとって白だった少女は、
弱い妖怪を守るようになる。
そうしているうちに、やがて黒とみなされて封印されてしまう。
守られた妖怪たちにとって、
守ってくれる少女を封印した
“人間”という存在は黒になった。

時が経って封印がとけたとき、
彼女はいったい何色の存在なんだろうか?

いつだって、彼女は白であり続けた。
人間たちにとっても、妖怪たちにとっても
――信仰を得て、人も妖怪も導く存在として。

この世界は光に満ちている。
盤面を埋め尽くす白い駒のように。

TRACKS

  1. 彼女が見た夢へ
  2. タイニィテレグノシス
  3. 雲海と夜空の間で
  4. ヨーソローシップ
  5. アンサング
  6. Othello
  7. ファイブピース

STAFF

Arrangement,
Mixing,
Mastering
秋晴
Design,
Development,
Storytelling
冷凍イナバP
Illustration
かずま
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

本作のモチーフとして選択した東方星蓮船という作品では、出会っていく敵キャラたち(小傘を除く)が封印された聖を助けるために自ら動いています。他の作品は基本的にはボスであるキャラに使役される、または企みに協力する形で物語に参加していることと比べると明らかに異質といえるのではないでしょうか。

作品の物語に登場する人間たちはみんな強いのであまり実感はありませんが、星蓮船の物語では、人間にとって妖怪はやはり絶対悪、恐怖の対象あったことが示唆されています。そんな中、“元”であるとはいえ人間だった尼僧、聖白蓮が妖怪を救っているという事実は当時の人間たちの彼女への印象をひっくり返すには十分すぎるほどだったでしょう。 一方で妖怪達が元人間の尼僧を恩返しとばかりに奔走している姿に、この作品が単なる勧善懲悪モノではないことが表されています。今回のアルバムではそういった正義と悪、人間の心のもろさのようなものを「othello」という名前に託し、表現したつもりです。

オセロという有名なボードゲームは、その名の通りシェイクスピアの戯曲「オセロ」を起源としています。黒人の将軍オセロとその白人の妻をとりまく人間たちの様相が目まぐるしく変わっていく様から誕生したといわれています。 戯曲「オセロ」が誕生して400年余りが経ちましたが、人間はあいも変わらず、ちょっとしたことでコロコロ変わってしまいます。

僕が東方projectという作品に出会って早いもので10年経ちました。当時はいわゆるオタク文化にここまで浸かるとは思ってませんでしたし、戯れに始めた音楽という趣味もここまで続くとは夢にも思ってませんでした。人間ちょっとしたきっかけでこうも変わるものかとしみじみしながらアレンジさせていただきました。 6枚目のアルバム「othello」お楽しみいただければ幸いです。

Garamondという書体があります。クロード・ギャラモンの名を冠した活字は、彼の死後に売却され、各地へと流れてゆきます。その後はゆるやかに変化を遂げつつ、ひっそりとその命脈を保ってきたのです。

ローマン体自体はトランジショナル(まさに過渡期!)なものを経て、セリフがヘアラインになるモダンローマンへと変遷します。ところが、アーツ・アンド・クラフツを主導したウィリアム・モリスはコントラストの強いモダンローマンを好まず、中世からのローマン体を推奨したという話があります。そうして20世紀に改めてGaramondが注目され、こぞって復刻されました。一説では、Garamondには1000以上のバリエーションがあるとまで言われています。

――活字の時代に華やかに活躍したGaramondが人々に忘れ去られ、何世紀かの時間を経て再び脚光を浴びる。これって、ぼくがむかし幻想郷のどこかで聞いたおはなしにちょっとだけ似ている気がする。 書体に正義も悪もないですが、Garamondは光と影の両方を経験してきました。古典的なフォルムの中に感じられるルネサンスの優雅さ。どこかの大魔法使いもきっと、この書体なら気に入ってくれるんじゃないだろうかと思います。

アートワークはかずま氏にお願いいたしました。ぼくの描く曖昧模糊としたストーリーを見事にイラストにしていただいて感無量であります。ありがとうございます。

それでは、またお会いできる日まで。

TRFB1005

INFORMATION

TRFB1005 “ティルナノーグと刻の歌”
Released on 2015.08.14
Comic Market 88 ダウンロードURL↗

STORY

この夏、早苗さんと旅にでかけませんか?

木々のささやき、さざ波の奏でる音色。

かすかに聞こえることりのさえずり。

日常を少しだけ離れて、時間を忘れて、
上質な自然のセッションを味わおう。

まるで竜宮城へ迷い込んだかのように。

幻想郷から、現代へ。

早苗さんの故郷をめぐりながら、
夏の旅を満喫しよう。

Traumerei Fabrik 5作目のコンピレーションは、
そんなひと夏の旅行をイメージした作品です。

TRACKS

  1. 海底都市の視る夢
  2. 変わってゆくものと、
  3. ラピスラズリの泪
  4. 水面上のアステリズム
  5. 変わらないもの。
  6. シーラカンス
  7. ティルナノーグと刻の歌
  8. それでも針は回っていく。

STAFF

Arrangement
(exc. M2,M5&M8)
M2,M5&M8 Compose,
Mixing,
Mastering
秋晴
Design,
Development,
Storytelling
冷凍イナバP
Illustration
ゆうがた(マシュマロ小児科)
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

本作は音楽CDではありません。楽曲データをダウンロードする形式の作品です。 個人の引用の範囲を超える転載や、再頒布、改変などはご遠慮ください。

LINERNOTES

前作『Papyrus』から3年経ち、ようやく今作『ティルナノーグと刻の歌』を完成させ頒布することができて、ほっと胸をなで下ろしています。

今回のアルバムの構想や企画自体は実は3年前からしていて、楽曲の製作も進んでいました。その歳月の中で、音楽の好みという単純なことをはじめとし、価値観等に至るまで色んなものが変化していって、なかなか自分の中でこれだと思えるものを作ることができなかったために、完成しきれず時間だけが過ぎていったのかなと思います。

ティルナノーグというのは日本でいう竜宮城のようなもの、今作では幻想郷を指しています。「しばらくの間早苗さんは幻想入りしていたが、その間外はどうなっていたのか? そしてそれを見た早苗さんはどう感じたのか?」という設定はありますが、その答えは基本的に受け手のみなさんにどう受け取って頂いても構わないようにしています。委ねているといったほうが正しいかもしれません。ただ、「時が変えていってしまうものも多いけど、変わらないものもあるんだよ」ということがテーマとしてこのアルバムの根底には存在しています。

今回と前作で大きく音楽性は変わりましたが、それでも、その中で変わらないものも確かにあって。サークルとして活動して4年経ちましたが、ようやく自分達のやりたいこと、出来ることが見えてきたような、そんな作品になっています。お楽しみ頂ければ幸いです。

今作はリーダーの「“◯◯ e.p.”みたいなの作りたい」という一言からはじまった……とメモに残されています(3年前の話なのでそういうやりとり自体記憶が薄いのです)。今作は制作前の話し合いにおいて、「とにかくオシャレなもの作りたいよね」「なんかサブカルっぽいことしたい」という方向で盛り上がってしまって、「じゃあいっそ、ただ単純にやりたいことやるか」という感じでスタートしました。できあがってみると全然サブカルでもオシャレでもない……。

「2015年夏、東風谷早苗の里帰り」という爽やかなキャッチコピーを掲げ、早苗さんが現代入りして……という設定もあるにはあるのですが、今作に限ってはあくまでオマケで、なおかつ受け手のみなさんに任せている部分でもあります。いろいろ妄想を膨らませていただけるとストーリーテラー冥利に尽きますね。

そんなわけで好き勝手やりましたので、デザイナーとして今作について語ることは、実はそれほど多くありません。デザインは一切なされていないので……。あえて言うならば、「やりたいことをやりたいようにやった」ということが、デザインとしての“サブカルチャーの体現”なのかもしれません。

TRFB1004

INFORMATION

TRFB1004 “Papyrus”
Released on 2012.08.10
Comic Market 82

STORY

Traumerei Fabrik 第4作目となる今作は、”Papyrus”と題し、過去に発表した曲のリアレンジを収録しています。

テーマは「古いものを新しく作りかえる」こと。メンバーが3人になってから早1年。各々が改めて自分の過去の作品について見つめなおし、その拙さ、未熟さを認識しました。その上で、いま改めて作るならば……という挑戦です。

作り直してなお、拙い作品であるかもしれません。いいえ、いずれまたこのPapyrusも、「まだまだだな」と思う日が来るのでしょう。それでも、これが今の私たちの全力です。

過去を現在に。そして、よりよい未来へつなげる――

そんな思いを込めた、4th Compilation “Papyrus”

ぜひ、お手にとって確かめて下さい。

    収録曲の元となった曲 /

  1. 夢うつつの幻想郷
  2. Shadow Servant
  3. Deadly Nightshade
  4. Diamond Dust
  5. Absolute command
  6. Foxtrot
  7. Innocent Violence

TRACKS

  1. シムラクラム
  2. ShadowServant
  3. Deadly nightshade
  4. 六花の丘
  5. Grand Guignol
  6. Foxtrot
  7. Flamberge

STAFF

Arrangement (exc.M4),
Mixing,
Mastering
秋晴
M4 Arrangement
春雨
Design,
Development,
Storytelling,
Illustration
冷凍イナバP
Original
ZUN(上海アリス幻樂団

LINERNOTES

今回は自分の過去の作品のリアレンジ、またはリミックスを作るということで、今まで作ってきた自分の曲と向き合う必要があり、実質、黒歴史を掘り起こす行為で、それが一番つらい作業でした(笑)そうしてどうにか新しくなった曲ですが、元々HR/HM寄りなアレンジだった曲をさらに激しく重厚なサウンドに仕上げられたと思います。ここ数年で僕の好みの音楽や考えなどが大きく変わっていったこともあり、何曲か元のアレンジとかけ離れてしまったものもありますが、それもひとつのスパイスとして楽しんでいただければなによりです。

秋晴から最初に”Papyrus”というタイトルを聞いてから、自分なりに「古いものを新しく作りかえる」ということについて考え、そして至ったのが今回のパッケージ、ジャケットです。くしゃくしゃの古臭い”過去の”封筒を、思いっきり破って下さい。そして”現在の”ジャケットを取り出して、そっと開けると……。ぶわっと、大きく広がっていく”未来”。そんな思いでデザインしました。みなさんが、このアルバムを通して、私たちの成長を感じて下さることを祈っております。

TRFB1003

INFORMATION

TRFB1003 “トロイメライファブリック”
Released on 2011.08.12
Comic Market 80

STORY

にとりはある日夢をみた。夢の中で、最高の工場に出会う。

充実した設備の中で、にとりはたくさんの物を発明した。テレビにパソコンに冷蔵庫……。

そうして、彼女は幻想郷中で話題になった。

幸せだった。好きなことを好きなだけできる。
それをたくさんの人に評価してもらえる――

しかし、その幸せは唐突に終わる。
夢から覚めたにとりは、一筋の涙を流した。

しばらくして、彼女は悲しい気分を落ちつかせるために散歩へ向かう。

そこで彼女へ目にする。寂れた廃工場を。

その廃墟は、彼女にとって最高の工場だった。

にとりは涙を浮かべた目のまま、顔をくしゃくしゃにして、笑った。

TRACKS

  1. 夢うつつの幻想郷
  2. いつもとちょっぴり違う世界
  3. うたかた
  4. 夢の工場
  5. 天に届くは神々の子守唄(TFver)

STAFF

M1,3,5 Arrangement
秋晴
M2 Arrangement
春雨
M4 Arrangement
秋晴,春雨
Mixing,
Mastering
みっつん(Applice
Design,
Development,
Storytelling,
Illustration
冷凍イナバP
Original
ZUN(上海アリス幻樂団