TRFB1006
STORY
世の中には、正義と悪が確かに存在している。
正義と悪はしばしば物語になるし、事実にもなる。
ここ幻想郷にもいろいろな話が伝えられてきた。
だけど、正義と悪って誰が決めるんだろう。
――変なノートで悪人を殺すのは?
――権力者から盗みをはたらいて貧しい人に施す泥棒は?
――妖怪のために尽力した人間は?
正義と悪というのは、物事を見る立場や時代によって
ひっくり返るものなのだと思う。
それは、まるでオセロの駒みたいに。
かつて人間たちにとって白だった少女は、
弱い妖怪を守るようになる。
そうしているうちに、やがて黒とみなされて封印されてしまう。
守られた妖怪たちにとって、
守ってくれる少女を封印した
“人間”という存在は黒になった。
時が経って封印がとけたとき、
彼女はいったい何色の存在なんだろうか?
いつだって、彼女は白であり続けた。
人間たちにとっても、妖怪たちにとっても
――信仰を得て、人も妖怪も導く存在として。
この世界は光に満ちている。
盤面を埋め尽くす白い駒のように。

TRACKS
- 彼女が見た夢へ
- タイニィテレグノシス
- 雲海と夜空の間で
- ヨーソローシップ
- アンサング
- Othello
- ファイブピース
LINERNOTES
Garamondという書体があります。クロード・ギャラモンの名を冠した活字は、彼の死後に売却され、各地へと流れてゆきます。その後はゆるやかに変化を遂げつつ、ひっそりとその命脈を保ってきたのです。
ローマン体自体はトランジショナル(まさに過渡期!)なものを経て、セリフがヘアラインになるモダンローマンへと変遷します。ところが、アーツ・アンド・クラフツを主導したウィリアム・モリスはコントラストの強いモダンローマンを好まず、中世からのローマン体を推奨したという話があります。そうして20世紀に改めてGaramondが注目され、こぞって復刻されました。一説では、Garamondには1000以上のバリエーションがあるとまで言われています。
――活字の時代に華やかに活躍したGaramondが人々に忘れ去られ、何世紀かの時間を経て再び脚光を浴びる。これって、ぼくがむかし幻想郷のどこかで聞いたおはなしにちょっとだけ似ている気がする。 書体に正義も悪もないですが、Garamondは光と影の両方を経験してきました。古典的なフォルムの中に感じられるルネサンスの優雅さ。どこかの大魔法使いもきっと、この書体なら気に入ってくれるんじゃないだろうかと思います。
アートワークはかずま氏にお願いいたしました。ぼくの描く曖昧模糊としたストーリーを見事にイラストにしていただいて感無量であります。ありがとうございます。
それでは、またお会いできる日まで。