TRFB1009
STORY
博麗神社の近所に湧いた間欠泉にまつわる騒動が一段落してからはや10年。当時を振り返って思い出話に花を咲かせようじゃないかと、早苗、神奈子(と、オマケで諏訪子)が持ってきたのは一束の資料。それは地下の鉄道計画だった。これがどうしてなかなかよくできている。
10年前の絵空事を本気にしてみるのも悪くない。どうせ、地底の土地は有り余っているのだし。
「迷惑がかからないなら、勝手にすれば?」と、霊夢は興味がないみたいだけれど……
そんなこんなでできてしまった地下鉄には、今日もいろいろな存在が乗り込む。多くは自分の足で遠出をするのが難しい、里の人間たち。遠くに行く演出としてわざわざ乗ってくる妖怪や幽霊、鬼や神なんかもときどき。霊夢もちゃっかり、券売機の隣におみくじを置いている。
今日は誰がどこへ向かうのだろう。メトロは走る。幻想郷の有象無象とワクワクを乗せて――
東方projectの物語では起こり得なかったけれど、たまにはこんな妄想も悪くない。東方地霊殿から10年目を記念して、Traumerei Fabrikが送るフィクションのおはなしです。
TRACKS
- 幻想メトロ、全線開通
- 旅のしおりを忘れずに
- いつもの待ち合わせ場所
- 雑踏の中へ
- 本日快晴地底日和
- 地底の車窓から
- ダイアグラムラプソディ
- 最終便
- 幻想メトロ
LINERNOTES
ようやく……メトロの名を冠したアルバムを出せました……長かった……。
というのも、最初に「メトロ」というコンセプトが挙がったのが2012年の11月。6年余りの時間を経てようやくみなさんにお届けすることができました。とはいえ実際に手を動かしていたのは2018年の夏コミ付近からなのですが。
2012年のメモを見ると、無邪気にも「サインデザインやりたい! 路線図作りたい! ノベルティ化したい!」と書かれています。そこから妄想はどんどん広がり、CIをやろうとか、制定書体を作ろうとか、実際にダイヤグラムを引いてみようとか、各駅ごとの駅メロを作るんだとか、それはもう大風呂敷を広げに広げて、広げっぱなしで気づけばずいぶん時間が経ってしまって。
そうして火照った頭は活動休止期間や別のアルバムの制作を経験して徐々に冷やされて、最終的なガワとしては開業にフィーチャーしたクリエイティブに落ち着きました。いい落とし所だという納得半分、本当にこれでいいのかという疑問半分。
ともあれ、地霊殿から10年の節目ということもあり、ここらでいったんケリをつけて、やり残したこと、もっとやれたと思うことは次回作以降に昇華すると割り切って、この数ヶ月舵をとってきました。
幻想メトロの開業にフォーカスしてからもなかなかに難産で、どういう形でデザインに落とし込むのかに数週間悩んだり、コピーを決めるのに数ヶ月かかったり、 本当にうろうろさまよいながらなんとか形にして、いまもさまよいながらこの文章を書いています。その過程で、イラストをお願いしたたま。さんにはとても助けてもらいました。毎回、イラストをお願いするというよりもはやメンバーの一員のように一緒に作り上げていく感覚のほうが強いのですが、メトロは特に、イラストでぼくたちの世界を補強してもらったなと思います。ありがとうございます。
身内を褒め合うのもなんだかなあと思っていつもは曲の話はしないんですが、今回はひとことだけ。通しで聞いたとき、楽しくて、わくわくして、だけどたまに物寂しさもあって、地下鉄の、公共交通の持ついろんな表情が感じられて。いいアルバムじゃないですか?
キャッチーでポップなアルバムのライナーノーツなのになんだかズシッとした重量感のある文章になってしまいました。視聴前にこれを読んでしまったかたは、なにとぞいったん忘れてお聞きいただければ……。
それでは、またお会いできる日まで。